二次性副甲状腺機能亢進症について
副甲状腺の下線は胸腺とともに下降するので、下線はよく胸腺内にあったり胸腺にくっついていたりします。それ以外でも5腺め、6腺めといった過剰副甲状腺が胸腺内に存在することがあるので、胸腺舌部も手術時に切除するように心がけています。
これにより頸部過剰副甲状腺による再発を極力避けることが可能となります。移植腺は正常により近い腺の適量(当科では現在は120mgとしています)を15、6個に細切し、前腕に田植えのように移植します。傷は2cm程度です。
とろろ状など一塊にして移植する方法と比べて時間はかかりますが、分割して移植することにより、移植腺再発した場合には、結節性過形成にまで進行していない移植腺も残るので、再発手術後の再々発を減少させることが可能となります。
またシャント側でない前腕に移植することにより、カサノバテストで移植腺による再発の確認をすることができ、移植腺再発時には腫大した腺のみ局所麻酔下で摘出ができます。
では、最近執刀した二次性副甲状腺機能亢進症の手術(PTx)例を示します。
なお、PTxとはParathyroidectomy(副甲状腺切除)の略ですので、xは小文字で書くのが本来の表示です。
最近、シナカルセトの登場により、マキサカルシトールなどと併用することで、PTxが減少しています。
保存的治療により、iPTH(PTH:Parathyroid hormone:副甲状腺ホルモン)は落ち着いていても、cCa×Pi積が高い場合には、PTxをしておく方がいいでしょう(cCa:corrected
calcium補正カルシウム)。PTxにより確実にiPTHを下げることができ、cCa×Pi積も改善します。
血管などの石灰化の進行を抑えることができ、さらに骨痛などの臨床症状がある人は術後劇的に症状が改善します。
また医療経済からみても高額な薬剤を使わないですむPTxがいいと思われ、ひいては財政難の日本に貢献できます。血管石灰化は不可逆性であるので、特に若い人はcCaやPiが高いまま保存的治療で引っ張り過ぎないことが重要で、早めのPTxが望まれます。
また今の全身状態であれば手術が安全に行えるというような高齢者などにもPTxはいいと思われます。
しかし、PTxをするには確実かつ安全に手術ができることが重要であり、加えて名古屋第二赤十字病院(冨永芳博先生)のように、この上なく副甲状腺手術に情熱をかけた先生のいる各地の施設での手術が理想的です。
及ばずながら当科でも全力で治療させていただきます(文責:一森敏弘 2011.10)